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yami 第一話「ヤミテンの理由」

いつも一人。
一人が好きだったわけではない。
しかし気付けば私の周りには誰もいなくなっていた。
そのゲームが私を一人にしたのか。一人だからこそそのゲームに魅せられたのか。
今となっては思い出すこともない。
ただ一つ言えることがあるとすれば、私の全てはこのゲームの中にある。




今日の授業もろくに理解できなかった。
味わうのは、ただただ虚しさ。
(何をしにここまできたんだろう)
高校生になってはや1年、私はロクに勉強もせず、授業中は常に置物と化していた。
もともと勉強嫌いな性質であり、高校に入ってから塾もやめてしまった。
先生が何を言っても右から左、頭の中には何も残らなかった。
時々鉛筆を動かしては、理解できない文字列を虚ろな目で眺めていた。
(全然分からない・・・もう何もかもがどうでもいい)
大学へ行くことなど全く考えず、ただただ無駄に日々を食いつぶすのみ。
世間一般で言う落ちこぼれとは、なるほどこういう状態なのかと自嘲する。
(早く終わらないかなぁ。一分一秒でも早く帰りたい)
終了のチャイムが鳴ると、一目散に教室を出た。
教室に私の居場所などなかったからだ。



休み時間は校内を徘徊する。特に何があるわけでもないが、じっとしていられない性分なのだ。
どこへ向かうかもその時の気分次第。出来る限り人が少ないところを選ぶ。
人間という存在そのものが私には煩わしかった。
廊下を進み、ようやく人気のないところに出た。
誰もいないことを確認し、窓辺から外を眺める。
「こんなことがいつまで続くのかな」
友達もおらず、勉強もできない。
人から疎まれることもなければ、蔑まれることもない。
ただ空気と同じようにそこにいるというだけだ。
私がいなくなったとて、誰が困るというわけでない。
ただ世間体、高校生であるという肩書のために学校に来ているだけである。
考え込んでいるうちにチャイムが鳴った。
無為な時間を過ごすために、私は教室に戻った。



学校で何をするわけでもなければ、家でもまた同じことだった。
ただパソコンに向かうことだけを除けば。
ここには私にとっての明確な目標がある。
ネット麻雀、あらゆる人間がここに集い、日々腕を磨きながら上を目指している。
私もまたその一人。ここだけは私であっても誰憚ることなく自分を表せる。
さっそく起動し、予約ボタンを押す。
東1局6巡目 西家 
12444789m567p22s ドラ北
迷うことなくリーチをかける。他家に目立った動きはなく、手変わりもない。
これでダマにしていれば、他家の反撃を許すことになる。
打点の低さ、待ちの悪さは気にならなかった。
私が出来る麻雀はひたすらリーチで押す麻雀だけである。
どんなバカでもできるだろうという打ち筋だ。
こんな打ち方でも成績はバカにならない。
リーチを受けた他家はすぐさま受けに回る。幸い押し返せるような手は入っていなかったようだ。
捨て牌が三段目に入った頃、3mを引き当てた。
裏なしで500・1000。3人ノーテンのほうが高いという安手である。
だが私は上機嫌だった。
(アガるってことは、他家のアガリを潰すことだ。たとえ安手でも点棒以上の価値がある)
マイナスの期待値という考え方だ。おそらくリーチをかけられてアガりを逃した他家が存在しただろう。
つまりアガることによって失点を防ぐ。
攻撃は最大の防御だ。
(ヤミテンになんかするかよ。麻雀はリーチだぜ)
その半荘はその後大過なく進み、。南2局で持ち点は30000を少し超えていた。
4巡目でこの手牌
2467m23467p23488s ドラ西
迷うことなく7mを切る。トップ目の上家とは2万点以上離れており、捲くるには打点がいる。
下2人は点差が離れており、気にする必要はない。
少しでも打点を上げるためにはこれでいい。
5m引きはもちろん、58pでも即リーチだ。
7→6mの切りだしでカン3mは読めるまい。トップ゚目からの直撃も狙えると内心ほくそ笑んだ。
ところが2巡後にツモったのは3m。
234m23467p23488s
これでタンピン三色確定。
リーチ、といくはずだった。
しかしここで考える。
(このままでもマンガンある。ヒッカケでもなければ端牌待ちですらないからリーチをすればまずトップ目からは出てこない待ちだ。
それでもしアガり逃しでもしたら、そこから逆転できるのか)
平素の自分ならすぐに曲げていただろう。しかし少しでも目立たず討ちとりたいという見栄がヤミテンにさせてしまった。
6mを縦に置いた時、バチっと後悔の念が湧いた。
(巡目は早い、枚数も多い。条件は揃ってるのに何やってんだ俺は!)
その後トップ目は自由に打ち、対面から出た役牌を鳴き瞬く間にアガってしまった。

学校での自分を思い出す。ひたすら周りとの関係を絶ち、息を潜めて日々を過ごす自分を。
目立ちたくない、自分という存在を消したい。
私もこのヤミテンと同じだ、そう思った。
開かれることのなかった手牌をぼんやりと眺め、自分の弱さを噛みしめることしかできなかった。
















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Author:yami
天鳳鳳南七段。主に麻雀関連のことを書きます。牌譜添削を受け付けていますので、依頼したい方は牌譜をtwitterかコメント欄に貼り付けてください。お待ちしております。

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